麗人ヒロイン『変身』
桂子（けいこ）は２６歳の内閣府のキャリアである。
極秘の内に特命を帯びて、内閣府に所属している警察庁で特殊凶悪犯罪の捜査にあたっている。
出動時は凶悪犯相手の銃弾が飛び交うような争いの場面が多いが、そんな危険な任務に自ら志願して就いているのは桂子がある特別な能力を備えているためである。
２年前に他界した政府の研究機関の責任者で優秀な科学者だった桂子の父親が、生前に桂子とシンクロする高性能な戦闘用スーツを開発していたのだ。
その戦闘用スーツは弾丸などから身を守り、攻撃時には数倍の威力をもたらすというものである。
そもそも桂子は頭脳明晰な上に、実践空手の有段者でもある容姿端麗な麗人なのだ。
戦闘用スーツを身に着けて闘うその姿はまさに華麗で無敵ともいっていい存在なのである。
正体不明の「麗人ヒロイン」‥その鮮やかな活躍が報道されるうち、彼女はそう呼ばれるようになっていた。
人知れず胸のペンダントに内臓された特殊装置に向かって桂子が唱える時、それは瞬時に桂子の全身を覆うのだ。
身体能力の向上と物質転送による、いわゆる「変身」というものであった。
今回の任務における戦いは熾烈を極めていた。
敵対している相手はほっておけば莫大な国家的損害をもたらす程の強大な組織だった。
その組織の力は絶大でこの数週間の間、政府は劣勢に追い込まれていた。
だがこの間の捜査によって敵組織の全貌が判明、潜伏先を突き止め潜入することに成功した。
激しい戦闘を繰り返し、警察庁特殊凶悪犯対策チームは次第に敵本拠地深く突入していった。
「変身！！」
チームの仲間達からひとり離れた桂子はそう唱えると、ついに敵組織の幹部達が籠る場所へと突入した。
「貴様は、麗人ヒロイン」
ドドドドドドドド‥‥
その姿を見つけた敵が放った何発もの弾丸が桂子に浴びせられた。
ハチの巣になるかのような攻撃を桂子の戦闘用スーツが跳ね返す。
「これまでよ、覚悟しなさい。」
ひとりふたりと敵をなぎ倒して、桂子は一気に敵の首領を追い詰めていく。
「なんてことだ。‥お前の父親は随分と面倒な事をしてくれたな。」
「だが、今回、我々の調査で分かった事がある。」
「そのペンダント状の装置はお前が身に着けていないと力が発揮されないように細工してあるようだ。」
「あなた、なぜそれを‥。」
「ふん。‥麗人ヒロイン‥覚えていろよ。次は必ず‥‥」
敵の首領は、桂子のその問いかけには答えず、追撃してきた特殊凶悪犯対策チームの攻撃を巧みに逃れて本拠地を脱出していった。
特殊凶悪犯対策チームと麗人ヒロインの活躍で、政府は敵の本拠地を壊滅し甚大なダメージを与えることに成功した。
しかし、これで全てが終わったわけではない、この戦いはまだまだ続くのだ。
麗人ヒロインの秘密を…、桂子は敵の首領の言葉を不気味に感じていた‥
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