麗人ヒロイン『変身』　９



「そんな姿では、銃弾をはじき返す事などできまい。」

「……」 　　　 「……」

銃口を向けられている桂子とひろ……
さすがの麗人ヒロインも、なすすべがない。

「ふふふ…あれを見ろ。 もう終わりだ、観念しろ。」

「あっ、お父様！」

二人が目を移した先には、行方不明となっているひろの父親が連れ出されていた。

敵の戦闘員の手にかかえられ、その頭部には銃が突きつけられている。
その姿に、ふたりの絶望感は頂点をむかえた。

「ふふふ、刃向かえまい。」
「それでいい…、服従の姿勢を取れ。」
「その場で…うつ伏せになって、尻を高くあげろ。」

我が身のことだけなら、死を覚悟の上でそんな命令になど逆らっていたかもしれない。
しかし命の危機は自分のみならず、ひろにも、そしてひろの父の身にも襲い掛かっているのだ。

「早くしろ！」

「…くっ…」

桂子はうつ伏せになると、屈辱に唇をかみながら尻をあげていった。





「ふん、麗人ヒロイン、いい姿だな。恥ずかしいところが丸見えだ。」

「ところで…。」
「おいっ、何してるんだ。お前もだよ…」

首領にいわれて、父親の姿に愕然としていたひろがびくりとする。
ひろも、桂子同様に逆らう事などできないのだ。

「…あ…あぁ…」

ひろも、恥ずかしさに打ち震えながら言われるがままになっていく…





仇敵の首領に向かってうつ伏せとなり尻を高く掲げるふたり…
それはまさに惨めな服従の姿勢であった。
街頭スクリーンは無常にもそんな二人の屈辱的な姿を映し出している。

「…っ、…こんな…」

「…く、…悔しい…」

「尻の穴まで丸見えだ。ふふ、よく出来ましただな。　しかし…」
「充分に恥を晒してもらったし。…お前らに、もう用はない。」

このふたりがいたのでは自らの野望は果たせない。
敵の首領は、はじめから二人の抹殺を決めていのだ。

引き金に手をかけた指がまずは桂子へと狙いを定める…

「さらばだ。　麗人ヒロイン」

もはや、これまでか……
と……、

…ヒビビ…

桂子の胸のペンダントが…ぴかりと輝いた。


「！！　そうか。　今だ！　麗人ヒロイン！！」

ひろの父親が叫んだ。

「えっ! …は、はい…。」
「…変身…」

桂子が唱えた。
それは、敵の首領が銃を放ったのと同時だった。





…カキーン…

桂子の戦闘用スーツが銃弾を跳ね返した。




麗人ヒロインの変身が解除されてからすでに１時間が経っていた。
変身の解除から１時間…それが次の変身の為に必要な最低限の時間だった。

それは、戦闘用スーツの開発に携わっていた科学者であるひろの父だからこそ知り得る事であった。
ペンダントの光…それこそがその時を教えてくれたのだ。

ビビビ…

続いてひろの胸のペンダントもひかり輝く…

「…変身…」

今度はひろが、そう唱えた……






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