素っ裸のままで向かい合うように縛られ部屋に残された美男、美女。
真一とひろは、あまりに惨めで恥ずかしい姿をお互いに曝しあってしまった後だけに口を利くこともできない。
どの位の時間がたったのであろうか。
「真一さん。も、もう、私、死んでしまいたい！」
長い時間、愛しい人の前に乙女の恥ずかしい姿を曝しつづけていることに耐えられなくなったようにひろが口を開いた。
「ひろさん。」
真一はそんなひろに目を向けると
「嫌、真一さん、私を見ないで！」とひろが声をあげる。
あっ、とあわてて目をそらした真一が、
「ひろさん、諦めちゃだめだ。耐えてくれ。」と静かに告げた。
惨めな姿のままの真一は先程から身体をくねらせて何かをしようとしていた。
たえまない真一の必死な努力によって後ろ手に縛られた縄がゆるみはじめていたのだ。
「ひろさん。静かにして。もう少しの辛抱だ。」
手首の痛みも忘れて縄と格闘しつづけていた真一。
そしてついに、手から縄を解くと、身体中にしばりつけられた縄をほどき、床に捨てられた服を身につけた。
そしてひろの後ろへ回ると、ひろの身体に縛り付けられた縄をほどきはじめた。
「真一さん」
ひろは自分を守るために、必死にこの場から逃れようと真一が努力していた事を知って涙が溢れてきた。
しかし、自分にかせられた足枷を真一が外している間は流石にその恥ずかしさに全身を真っ赤にして、
真一さんひろを見ないでね、と小さな声で繰り返す。
真一はそんなひろの肩に自分のジャケットをやさしく掛けてあげる。
ついに自由の身になった二人、思わずひろは恥ずかしささえ忘れて真一に抱きつき大粒の涙をはらはらと流した。
真一はひろを抱き寄せると耳元に口を寄せる。
「よく、辛抱したね、ひろさん。もう大丈夫だよ。これから僕のいうとおりにしておくれ。」
小さな声でそういってひろに話し始める。
ひろは何もかもを真一に任せたように小さく頷いたのだった。

「おい、矢島。お嬢さんよ。惨めな姿を写真にとってやるぜ。」
勇次がカメラを手にして部屋のドアをあけて入ってくる。優子が後ろにつづく。
「うっ」と一瞬そこにふたりの姿がないのに気づいた勇次。次の瞬間、横から真一に後頭部をつよくなぐられて気を失った。
真一とひろはドアの脇に身を潜めて、二人が部屋に入ってくる瞬間をじっと狙っていたのだ。
「おい、おとなしくしろ！」
あっ、と身を引いた優子を羽交い締めした真一がそう告げる。
「何するのよ、やめてっ！やめなさい。」優子が叫ぶ。
ひろは部屋をでると、そこに散らばっている自分の服をいそいで、身につけた。
「よしっ、ひろさん。この女をそこの柱に縛り付けるんだ。」
「はいっ。真一さん。」
真一は、さっきまでひろがしばられていた柱に優子の身体を押しつけると、
ひろは力をふりしぼって優子の身体を柱に縛り付けた。
「ひろさん、よくやったね。もう大丈夫だよ。」
「真一さん。真一さん。あああっ。」
真一に言われて、ひろはやっとほっと安堵して、堰を切ったように真一に抱きついて泣き出した。
「真一さん、ひろは真一さんの前にあんな恥ずかしい姿を曝して‥。この人達にも恥ずかしいところを見られて‥。
ああっ‥。もう、私は、真一さんと結ばれる資格なんてないんだわ。」
と泣き崩れる。
「ひろさん。なにを言ってるんだ。僕の君への気持ちは変わらない。君が愛しい、君を愛しているんだ。
僕の方こそあんな惨めな姿をひろさんの前に曝してしまって。もう僕の事など嫌いになったのじゃないのかい。」
真一にそう優しく言われてひろは大きく首を振り、
「ああっ真一さん。愛しています。」とまた涙する。
「わかってくれたね、ひろさん。では、早くこの部屋を出て、家に帰っていてください。」
「し、真一さんはどうするのです。」
ひろが真一に美しい目を向けると、
「僕は、ひろさんをつらい目にあわせたこいつらを許さない。なに、心配しなくていい。危険なことはしない。
二度とこんな真似ができないようにしてやるだけさ。そしたらひろさんの家に向かうよ。
お義父さんに挨拶しないとね。少し遅れるからと伝えておいてください。」
「わかったわ、真一さん。でも、本当よ。絶対に危ない事はしないでください。」
「わかっているよ。ひろさんを悲しませるような事はしない。」と真一。
「わかりました。」ひろは、真一にそういうと、悪夢のような部屋をでて行った。

「優子さん‥。さあ、どうしたものか。」
とにかく、ひろの身の安全を確保したことで、ほっと一息ついた真一は勇次をしっかりと縛り上げた。
そして縛られて情けなさそうにしている優子に話しかけた。
「ご、ごめんなさい。私はただ、ひろさんが羨ましかっただけなの。矢島さん許して、許して下さい。」
と優子は、縛り上げられた事で、心細さに怯え必死になって真一に詫びるのだ。
こうして縛られてしまえば、あれ程、残忍な姿を見せた優子もただのわがままな、２０歳のお嬢様にすぎない。
「優子さん。さっきまでの威勢はどうした。僕は君達を許さない。
どんな酷い事を、あんな純真なひろさんにしたのかわかっているのか！！」
そういいながらひろの涙を思い出し、真一は怒りが込み上げてきた。
そんな真一の様子に優子は怯えたように、ごめんなさい、ごめんなさいとただただ必死に繰り返す。
「優子さん。‥クィーンと呼ばれるだけの事はある。綺麗な顔をしている。それに‥身体もだ。」
たしかに優子は、ひろとはまた違ったタイプの少しきつめの美しい顔立ちをしている。
なによりひろに負けない程の豊かな胸の膨らみと綺麗な身体のライン。それをお嬢様らしい服で包んでいる。
「ひろさんが君に味わわされた恥辱を‥、君にも味わってもらう。」
真一はそういって優子の前に立つと、その膨らみを強調している服を捲り上げた。
「いっ、嫌っ、やめて、矢島さん。許して。」
優子が悲鳴を上げるが、真一は冷たい視線を優子に向けたまま、服を剥ぎ取ってしまう。
優子の上半身はブラジャーだけの姿となった。
服から開放されて、ひょっとしたらひろと同じ位はあろうかと思われるほどの、美しい大きな形の膨らみがあらわれる。
優子のつけているブラジャーは、そんな真一の視線から身を守るかのように、大型の綺麗なフルカップのものであった。
大きな膨らみを完全に包み込むしっかりとしたもので、
ブラジャーの上からではそのやわらかな中身、全貌を想像することは難しい。
しかしその特大の膨らみと美しい形に、真一は一瞬、息を呑んだ。
恥じらいをみせながら優子は（もうだめよ。だめなの。これ以上はだめ。）と心の中でつぶやく。
そんな優子の気持ちに構わず、真一がスカート、そしてストッキングと続いて脱がしてしまうと、
優子は、ついにブラジャーとショーツだけの完全な下着姿となった。
その恥ずかしさに、おもわず顔を伏せる。
しかし、真一の非情な命令で、真っ直ぐに立たされて、真一の視線を一度に浴びることとなった。
真一の目には、大きく膨らんだ胸から一度にきゅっとしまったウエストへと流れるライン、その美しい下着姿の優子が映る。
綺麗な顔の下の豊かな膨らみ、それらすべてを包含した身体。
ここまでバランスの取れたスタイルの女性はいないのではないか。そう思わせるほどの美しい下着姿の優子であった。
「それでは、優子さん。ブラジャーをとってその大きな乳房をみせてもらおうか。」
真一は、そういって優子のブラジャーに手をかけようとする。
「嫌っ、だめよ。だめっ。いやっ！」と優子が狼狽し、絶叫する。
それは、優子が最も恐れていたものである。優子は大きく首をふり、
「いやっ、いやです、それだけは許して！」
と泣きじゃくり、異常な程に必死になって身体をくねらせながら真一の手から逃れようとする。
それほど生身の大きすぎる乳房を、さらすことが恥ずかしいのであろうか。
（だめなの‥矢島さん。私はだめなのよ‥これだけはだめっ。）
優子は真一に向かって心の中で叫ぶ。
その特大な美しい膨らみの全てを、男の目から守るように覆い隠すブラジャー。
それを取り去る事だけは優子にとっては何があっても、絶対にできない相談であったのだ。

（だ、だめなのよ‥‥）
優子の頭の中に高校生の頃の男友達の何気ない一言が思いだされる。
その言葉が優子の最大のコンプレックスを呼び覚ます。
そのコンプレックスは誰も知らない、誰にも知られてはならない優子の恥ずかしい秘密である。
今も真一の視線をくぎ付けにしている、ブラジャーを大きく盛り上げている胸の隆起。
しかし、本当のところは‥‥
Ａカップのブラジャーでさえ満たす事ができない、まったく貧しい胸の隆起しか持たない、まさに貧乳なのである。
なまじほかに欠点がなく、完璧ともいえるスタイルの優子であるだけに、
そのことは、よけいに耐えがたいコンプレックスとして長い間彼女を悩ませつづけている。
高校生の頃の優子は特にそのことに悩んでおり、なによりもその話題がいやだった。
他の女友達は成長期にもあることから、
その部分はどんどん成長をつづけていく。
しかし優子にはその兆しさえなかった。
その貧しい膨らみを目立たないように隠しつづけていたものの、
男子学生も女子学生のその事は最大の興味であったので、
親しかった男友達が、制服ごしに優子の胸を見ながら、
「それにしても、優子さんてペチャパイだね」
といった何気ない言葉が今でも胸に深く突き刺さっているのだ。
当時から並外れた美貌の持ち主であった優子は、
美しさへの羨望と賞賛以外の言葉を異性から浴びたのははじめての事だった。
それだけに優子のショックは計り知れないものであったのだ。
高校を卒業した優子は大きなフルカップのブラジャーを購入した。
ぶかぶかのカップの中で、その形の一部をも形成することができない悲しい姿が鏡の中にあった。
優子は、それ以来、人知れず‥特大サイズのパットをその中にしのばせつづけているのだ。
大きな膨らみを完全に包み込むフルカップのブラジャーは、優子のはじらいの証しなどではない。
彼女の最大の誰にも知られてはならない恥ずかしい秘密を覆い隠すために、
必要不可欠なものだったのである。
大学の入学式には、その後男達からクィーンと呼ばれるにふさわしい、
大きな胸そしてそれを包含した完璧なスタイルの身体と美貌を兼ね備えた優子の姿がそこにあった。
優子はその時の、皆の羨望の視線を今でも忘れない。唯一最大のコンプレックスから開放されたすばらしい瞬間であった。
そんな過去のでき事を思い出す。

（だめなの。矢島さん。だめなのよ。私はこれ以上、脱ぐことができないの。
絶対にこのブラジャーだけは外すことはできない。絶対にだめ‥。）
そう心の中で真一に、そして自分にくりかえしながら、
「許して、おねがいだから、それだけはかんにんして」と必死になって涙ながらに哀願する。
気位の高い優子にとっては、自分の最大の悲しい秘密が隠されたブラジャーを外されるくらいなら、
いっそ死んでしまったほうがいい位であった。
「それにしても優子さんてペチャパイだね」という高校生の頃の男友達の言葉が、
この切羽詰った状況の中で、優子の頭の中に渦のように回っている。
（ペチャパイ、ペチャパイ、ペチャパイ。私は本当はペチャパイ。
事実を知られてしまったら、誰もが驚くほどの、みごとな貧乳‥なのよ。）
巨大な美しい膨らみを覆う、そのブラジャーを外すことに対する優子の異常ともおもえる拒否反応。
優子の秘密を知った時の真一の笑止の視線や嘲りの言葉、
その中で自分という存在が崩壊してしまうことが辛く、耐えられないほどに恥ずかしかったのだ。
許して、許してと哀願を繰り返す優子。しかし‥、そんな優子の事情など真一は知らない。
「なっ、なにするの。やめて、やめてぇ」
優子はふたたび大きく狼狽し、叫び声を上げた。
真一が、優子のブラジャーのホックに手をかけたのだ。
「いやっー。許して、後生よっ。」
優子は異常なまでの狼狽を見せ、叫び声を上げた。
「さあ、優子さん。その大きな乳房を見せてもらおう。」
真一はかまわずブラジャーのホックをはずすと。
「‥い、いやっ、‥いやっー‥」
首を大きく揺さぶって、この世の者とも思えぬ甲高い絶叫をあげる優子の胸から、ブラジャーを取り去ってしまった。