第５話〜羞辱地獄の入口〜　（２００６年１２月１５日掲載）
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ひろが、男の声に、はっと眠りから覚めたのはそれからさらに１時間程してからであった。
目覚めてすぐ、何か‥、先ほどまでなかった腹部への痛みのようなものを感じた。
うう‥、お腹が痛い‥そう感じながら目を開けたひろの視界に、その部屋の様子が飛び込んできた。
どこかのホテルの部屋のようだ。　ここがどういう部屋なのか？
経験のないひろでも、如何わしいホテルであろう事位はおおよその察しがついた。
ひろは、錯乱する頭の中で先ほどの出来事を思い出して、慌てて上体を起こそうとした。
しかし、両手が動かない。後ろ手に、両腕をしっかりと縛られたひろは、
ベットの上で壁に寄りかかるようにして、座らされていたのだ。
「ひいっ」
ひろは、恐怖に悲鳴をあげて体をよじらせた。
「ひろ君、目がさめたようだね‥」
その声の主に向かって、「か‥課長。なんで！」と抗議しようとしたひろは、
‥あっ‥と気づいたように「し‥進一さんは‥」と進一の姿を探した。
「ひろさん‥」
進一の声がする方へ首を向け、視線を走らせたひろは
「あっ」と叫んで、その恥かしさにまた、目を反らしてしまった。
進一は、パンツ一枚の姿で椅子に掛けさせられ、両手、両足を縛られて身動きできなくされていたのだ。
進一は自分の不甲斐ない格好に顔を赤く染め、身体を揺すって緊縛された恥辱から逃れようとしている。
「ひろ君。君と僕の関係は、こいつに話しておいたよ。」
「あ‥あなたとなんて！‥関係なんて‥なにも‥ありません！」
「そんな‥冷たい事言うなよ。それにしても参ったよ。君が社長の親友の会社のご令嬢だったなんてね‥
そういう事は、早く言ってもらわないと困るな。おかげでこっちは首になってしまった‥」
「そんなの‥私のせいじゃ‥ありません‥」
「いいや、償いはしてもらうよ。」
「‥な‥なにを‥しようというのです‥」
この男は‥自分をどうしようと言うのか。ひろは言い知れぬ恐怖を感じ身体を震わせた。

‥‥２年前
ひろは、会社に勤め始めてしばらくした頃から、
直属の上司であり、課長であったその男から、たびたび食事に誘われるようになった。
その男は４０代の典型的な中間管理職といった感じの男だった。
ひろは個人的にはそんな課長の誘いに応じる気持ちなどまったくなかったのだが、
立場上なかなか断りきれず、３度に１度位の割合で食事の誘いに応じていた。
その内に食事が終わると課長は
「自宅までタクシーで送っていこう」
と言い、タクシーの中で、ひろの手を握ったり、腰に手を回したりするようにもなった。
ひろは自宅を知られるのも嫌だったので、いつも自宅の傍まで来るとタクシーから下りるようにしていたのだが、
そのうちに、「今度、ふたりでドライブにでもでかけないか」と夜中に電話まで掛けて誘ってくるようになったのだ。
さすがにひろは、上司という立場を利用して際限なく親密度を増してくる課長の態度に耐え切れず
「お断りします‥。こんな時間に電話をかけてくるのはやめてください。」
といい、今後の食事の誘いも断りたい旨を伝えたのだ。
すると「そんな態度をとっていいのか‥考え直した方が身のためだ」と優しかった課長の態度は一変した。
事あるたびに仕事中にもそのように誘われ脅かされるようになったひろは、怖くなって母親に相談した。
ひろの上司であったその男が、退職していったのは、それからしばらくしてからであった。
ひろの父親から連絡を受けた社長が「セクハラ」を理由に男を首にしたのである。
事実だけに、非を認めた男は素直に退職したのだが、ひろへの想いと恨みだけは強く残っていたのである‥

ひろにとって、幸せな気分でいた今日という日が、偶然という悪戯のためにあまりに不幸な日となった。
結婚式帰りのひろを街で見かけた男は、その美しさに誘われるように何気なくひろの後をつけていたのだ。
そして意外にも、若い男と二人だけでバーにいるひろを見てしまった事で、
このような計画を思い立ち、必要な準備を整えて機会を伺い、実行に移したのである。
そして‥今、美しいドレスに身を包んだまま、その男の目の前で自由を奪われているひろ。
‥ひろへ寄せる想いと恨み‥、男にとっては会社を辞めた後も長い間想い描いていた事を、
思うがままに、行う事ができるチャンスが訪れたのだ。

両腕を後ろ手に縛られたひろは、ベットの上にスカートを広げて座らされて、
これから、訪れそうな恐怖に、黙ってうつむいていた。
‥しかし、そのひろの様子が先ほどから少しおかしいのだ。
ひろのスカートの下には、ストッキングに覆われた両脚が長く美しく伸びている。
ひろのその両脚が、先ほどから、せわしなく交互に摺り合わされていたのである。
ひろは広がったスカートの中で両太ももを摺り合わせるようにして蠢いていたのだ。
（ん……、ああ‥ん、んんっ……。）
ひろの両脚は小刻みに震え、落ち着きなく摺り合わされている。
清楚で美しい令嬢が、このように落ち着きのない動きをしているのは何故なのか…
それは、ひろにとっては、男にけして覚られてはならない、たまらなく恥ずかしいものだった。
まさか、尿意でも催してしまったというのであろうか…、
いや‥実は‥、それ以上に辛く、恥かしいものだった。
事もあろうにひろは、この状況下で‥なんと、便意を催してしまっていたのである。

（あっ、ん……ん……っ……。い…いやだわ‥なんで‥‥。）
目覚めた時に感じていた、腹部への違和感。お腹の痛み‥そう感じていたもの、
しかし、それが腹痛などではなく、明らかに便意である事に気づいたのは男との会話中であった。
披露宴の食べ物‥、そしてアルコールのせいで大腸が刺激されたせいなのか‥そんな事を考えながら、
ひろは穏やかに、しかし次第に強く押し寄せてくる便意の波に両肩をすぼめて全身を力ませ、
そして、また再び両脚をもじもじと摺り合わせた。
気を失っている間にこの卑劣な男の手でそんな効果をもたらす薬を飲まされたという事など、ひろは知らないのだ。
（ああ‥、ど‥どうしたらいい‥の‥。おトイレに行きたい‥）
ひろの両脚は、大きく広がったスカートの中で摺り合わされたままであり、
ひろはその恥かしすぎる苦痛を抱えて、ひとり、自分の中でその便意と戦っているのだ。
しかし、その苦痛の理由が便意であるという恥かしい事実など、絶対に覚られてはならなかった。
自分に淫らな視線を向ける卑劣な男が、そして何より愛しい進一が目の前にいるのだから‥