優子には晋吾の他にも、過去につきあっていた恋人はいて、身体を許した経験もあったのたが、
そんな恋人達にもなるべく裸身を見せないようにしてきていた。
行為の時はいつも恥ずかしいからと灯りを消すように要請するのが常だった。
だから過去の恋人達ですら、優子の裸体をまじまじと見ることはなかったのだ。

それほど、優子にとっては胸が小さいというコンプレックスは強烈なものだった。
成長期に入ってもなかなか乳房は成長せず、中学生の頃はまったく膨らみのないそれをひどく悩んだ。
美少女だった優子がクラスメートに唯一からかわれるのはいつもその事だった。
高校に入る頃のそれは、ほんのわずかな隆起を見せるようになったが、それでもＡＡＡカップである。
女性らしい、グラマーな同姓を見ると、どうしても嫉妬を感じてしまう自分がいた。

「すいせん。ちょっと失礼しますね。」
看護婦が、優子の両腕に手を添えて握り締めた。
優子はどうしても両手で胸を隠すような動作をしてしまうため、診察が進まないのだ。
優子の腕が上へ向けて引っ張られていく。
（あっ、いやっ！）
両腕を頭の上へともちあげられるという姿勢を取らされた優子の乳房は、より引き延ばされて平たくなった。
「もう隠したりしませんから‥。離して‥下さい‥」
優子が小さな声で看護婦に囁くが、診察の間だけ少しの辛抱ですからといって手を離してはくれない。
「たしかに隠そうとするのもわかります。成熟した大人の女性にしては、少々寂しい膨らみですものね。」
「！！」
看護婦が言ってしまったそのひとことは、優子の胸深くグサリと突き刺さった。
「あっ、ごめんなさい。でも、こうしたほうが診察がしやすいので‥。恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。」
最も気にしていることを指摘されて、かぁぁぁっと頬をさらに赤らめてあまりの屈辱に声も出ない。

「先生、ＯＫです。診察をはじめてください。」
（い、いやぁ〜っ！）
看護婦の言葉に優子が心の中で絶叫する。
優子の目には、恥辱で涙がたまっていた。
看護婦の言葉にうなずいた晋吾が、今度こそはっきりと優子の胸を覗き込んだ。
引き延ばされた姿勢の元恋人の体を、初めて目の当たりにして、
ついつい、品定めしているかのようにじっくりと眺めてしまうのだ。
（ああぁ、これは‥）
ただでさえ申し訳程度にしか膨らんでいない優子の乳房である。
両腕を上に引き延ばされると、まさにまっ平になってしまう。
男性の胸板のようにすら見えるが、その分、大粒で突起した乳首が目立っていた。

（あぁっ、いゃっ、はずかしい‥）
優子はとても晋吾の顔をまともに見ることなどできない。
おもわず顔をそらした先で、看護婦と目があった。
看護婦のその視線が興味深そうに優子の乳房へと注がれているように感じられる‥
（晋吾先生となにか関係がありそうな女だけど）
（な〜に、この女、ホントにぺったんこじゃない）
（それにあんな、大きな偽乳パットなんかして）
（それにしても、乳首だけは立派ね、ふふふ）
看護婦の残酷な心の声が優子の耳には聞こえてくるのだ。
それは異常なまでの胸へのコンプレックスからくる被害妄想なのかも知れない。
（昨日、病院に運び込まれたときは、すごい巨乳の娘って思ったのに）
（この女、ほんとはこんなオッパイだったんだ）
（さすがに、いくらなんでもこれはちょっと小さすぎるかもしれないわね。可愛そう。ふっ）
同姓ゆえの冷ややかなからかいの声が頭の中に響き、
病院中の笑いものにされているかのような錯覚にさえ陥るのだ。
優子はその屈辱的な妄想に、唇を噛みしめた。


晋吾の方はというと‥‥‥‥
（優子さん。初めて会った時から、服の下にどんな体を隠しているんだろうって想像してました。）
（まさか、こんなふうに、‥こんな日が来るとは‥）
恥ずかしそうにしている優子を前にしても、半分理性を失いかけてしまっている。
（まさか、あの優子さんが‥、こんなオッパイだったなんて）
（たしかに、大きければいいってものではないけど）
（ただ、これはいくらなんでも小さすぎるかもしれないな‥）
いつも想像の中で思い描いていたものと現実のものとの違いに驚きつつも、
しかし、ついつい目の前の獲物をどうしようかと考えてしまっている事に気づき。
（いけない、いけない。ちゃんと診察をしなければ。）
そう言い聞かせ、そんな自分をやっとのことで抑えているのであった。