「美沙課長。新入社員達を連れてきました。よろしくお願いします。」
美沙に声を掛けてきたのは和也である。
「係長。ありがとう。わかりました。今日から３日間あなたもいっしょによろしくね」
美沙は、今年から係長へ昇進した和也に返事をすると新入社員達に目を移した。

和也に連れられてきた新入社員は大学を卒業したばかりの３人の男性と２人の女性。
新入社員研修を終えて、大勢の中から選抜され本社勤務となったこの５人を、
人事部から頼まれて３日間、基本的な実務を中心に美沙が教育することとなっていたのだ。
若い頃から美しくおしとやかで仕事ができてスタイル抜群、羨望の的であった女性課長。
そんな、社員達の憧れの存在であった美沙も今は３２歳になっている。
しかし、その大きな胸はより肉感的になって今も健在であると男達は噂し合っているのだ。
新入社員達も、会社が誇るこの美しい女性課長の噂は何度も耳にしていた。

美沙と和也の仲は続いていたものの、誰にも知られずにいる二人だけの秘密の関係であった。
美沙としてはさすがに７歳年下の部下との結婚にまでは踏み切れずにいる。
気づいたら和也と男女の関係になってから、２年という月日が立っていた。
そんな美沙の最近の悩みは、男達の視線を奪い女達が羨むその大きな胸なのである。
和也に、まるでエロティシズムの塊だとまで言わしめる、
一段と熟した軟らかすぎる巨乳がコンプレックスとなっているのだ‥‥


「新入社員の皆さん。ご苦労様。それではこれから研修会場のホテルに向います。」
「はい。課長、よろしくお願いいたします。」
美沙に挨拶した新入社員達は、初対面となる噂に違わぬ美沙の美貌に感服していた。

研修最終日の前夜はホテルでのささやかな懇親会が開かれた。
もうこの頃には、その実務能力、指導能力、立ち居振る舞い、
そのすべてに新入社員達は敬服し美沙に憧れるようにさえなっていた。
懇親会ではアルコールも入り、ずっと気を張り詰めていた新入社員達も、
この時ばかりはリラックスした様子であった。

「さぁ、あなた達。お話はこの位でね。明日もあるのでもうそろそろ部屋に戻りなさい。」
懇親会がお開きになった後も居残り続けて、美沙に話かけてくる新入社員の女性２人に美沙は言った。
「課長、すいません！もうちょっとだけいいですかぁ」
可愛い笑顔で拝むように２人の若い女性に謝まられて、美沙は微笑んだ。
「もう‥。少しだけならいいわ、一体何？」
美沙が尋ねると、２人は美沙の胸元に視線を滑らせる。
「課長。あの、課長ってすごい胸大きいじゃないですか。先輩達からＨカップって聞きました。」
「ホント男性社員の人達って皆んな課長の胸の虜みたいで。課長みたに大きくする方法ってないですか？」
アルコールが入った事で、２人は学生時分の頃の乗りになっているようだ。
「Ｈカップって‥、誰がそんな事言ったの。」
（もうこの娘たちは‥。でもついこの前まで学生だったんだものアルコールの席で少し位は仕方ないかな‥）
美沙はそう思いなおして、
「特に、何かした事なんてないのよ。胸が大きいのなんて肩が凝って良いこと無いわよ。」
「そうなんですか。」
「さぁさぁ、もうこの位にしましょう。部屋に戻りなさい。」
笑顔で諭すように言った美沙の顔には、
自分の胸が人に羨まれているという優越の笑みが乗っていたのかも知れない。
「はーい」
と答えた２人を送り出すと、
（あらっ、いけない。もうこんな‥約束の時間だわ）　と、美沙もいそいで部屋に戻っていった。


研修会場となっていたホテルの美沙の部屋、時計は午前０時を回ったところだ。
ベットを背にした美沙と向き合う形で立っているのは新入社員の男達‥そして‥。
研修最終日前夜の懇親会のあと、部屋に戻った美沙は和也とこの部屋で愛し合った。
もちろん、上司と部下のその関係は誰にも気づかれてはいないはずだった。
ところが、情事が終わって和也が部屋を出て行った直後に、彼らが美沙の部屋を訪れたのだ。
（もしかして和也君の事、見られた‥）
そんな、危機感を感じて、美沙があわてて、彼ら新入社員達を部屋にいれた‥その時
彼らといっしょに、もう一人の若い男が入ってきたのだ。
「！！」
美沙は新入社員達の後ろに隠れるようにしている男の存在に気づいた。
「課長、お久ぶりですね。いろいろとお世話になりました。」
男はそういうと、伏し目がちに俯いていた顔を美沙の方へと向けた。
「！‥あなたは‥」
そう言ったきり、美沙は声を失った。

「‥課長、どうしたんですか。‥」
その声が耳に届いて美沙は我に返った。
「課長‥。僕ら、係長との事、見てしまいました‥。」
研修成績も優秀で新入社員達のリーダー的な存在となっていた勇次が話しはじめた。
「！」
びくっとする美沙に、今度は他の２人の新入社員、義男と清二が続けて話しはじめた。
「僕ら、失礼だとは思ったんですが、もう少しだけ課長のお話が聞きたくて‥」
ぼそぼそっと話はじめた義男の後に、清二が続く。
「懇親会が終わってから、３人で課長の跡について部屋の前まできたんです。そしたら‥」
「係長がこの部屋に入ったところを‥‥あなた達、見たのね。」
（見られた‥。どうしよう‥）　美沙の頭の中はさらに動転していく。
「はい。その後、‥えっと、僕ら部屋の前でずっと係長が出て行くまで待ってました。」
勇次が話をつづける。
「その時、こちらの先輩にいっしょに課長本人に確かめに行こうって声をかけられたんです。」

「加納‥君。あなたがなんでここに‥」
勇次達に声をかけてきたという男、今、新入社員３人の後ろに立っている男は「加納」だった。
美沙達の会社を彼ら新入社員と入れ違うようにして退職した元社員である。
そういった意味では、たしかに勇次達の先輩といえない事もない。
加納は、先輩社員のふりをして、勇次達に声をかけていっしょにこの部屋に入ったのだ。
加納は和也より２年先輩で、常に和也と競い合うように仕事をしていた。
その加納が、係長への昇進争いで後輩の和也に敗れたことで退職していったのだ。
加納は早くから美沙と和也の関係が妖しいと疑っていた。
和也の昇進は美沙の後押しのせいだと思っている。
「美沙課長。やっぱりこういう事だったんですね。」
加納が美沙に近づき、ポケットから取り出したスマートフォンの画面を見せつける。
‥和也がこの部屋を訪れて、カギをあけて‥すぐに抱きついた‥その時の写真を‥撮られた‥
加納が退職の挨拶に来たときに（覚えてろ‥）と小声で吐き捨てたのを思い出し
美沙の膝はガクガク震え、とても立っていられずに後ろのベットに座り込んでしまった。

「加納君。‥私は何も‥」
美沙はそう言うのが精一杯だった。
特に、普段から和也だけを特別扱いしていたつもりはないのだが、
たしかに‥異例の速さともいえる和也の係長昇進を推薦したのは自分だった。
加納とすれば自分の今の惨めな境遇は美沙のせいだと思いこんでしまっている。
何とか復讐がしたいと、証拠を掴むためにいろいろと調べた上でこのホテルまで来ていたのだ。
そして、その証拠をつかんだ今、美沙への恨みの感情は本物となった。
「何か、言い訳ができますか。おしとやかで美貌が自慢の美沙課長さま！！」
加納が口調を強めた事で、勇次、義男、清二の３人がびくっとする。
彼らは、いまだに加納が本当に先輩社員だと思い込んでいる。
憧れつつあった美貌の課長と若手の星の新任係長との関係を知ってショックを受けていた３人に、
何かの間違いかも知れないからいっしょに行って直接たしかめようと加納が声をかけたのだ。
それもこれも美沙への復讐‥この部屋へ入るための加納の計算だったのだが‥。

「おしとやかな美貌の課長は‥本当は若い部下と如何わしい関係をもつ淫乱な女だった‥という事だ。」
そう言われて、美沙は絶句した。
何も言い返せなかったのだ。
「美沙課長。僕は怒ってます。そして、あなたに憧れはじめてるこいつらも怒っているはずだ。そうだろ！」
加納は勇次達にむかってそう言い放つ。
わけがわからないまま、先輩社員だと思い込んでる男にそう言われ、
どう返事をしていいいかわからずにいる勇次達であったが、加納が次に続けた言葉に驚愕した。
「奴との事、会社へばらされたくなかったら。今夜一晩、課長を自由にさせてください。」
「何を‥」
「ふ‥ふざけないで。そんな‥ことできるわけない‥」
加納のとんでもない要求に戦慄した美沙は、もちろん拒絶する。
「いいえ。だめですよ。ふざけてなんかいない。あなたは要求に従うしかない。」
「加納君、自分が何を言ってるのかわかってるの。冗談はやめなさい。」
「冗談なわけがない。これからじっくりそのＨカップの胸を堪能させてもらうんですから。」
「えっ！」
思わず立ち上がり、逃れようとした肩をぐんっと押されて美沙はまたベットの上に座り込んだ。

「いやっ！。胸を‥ってどういう事。あなたにそんなことされる理由はないわ」
「さっき、説明したはずですよ。奴との事を黙っててほしかったら一晩自由にさせろって。」
「それにほらっ、こいつらだって本当はその胸を堪能したいんだ。これは課長が誘ったんですから。」
「なっ何を‥。バカなことを言わないで、私が、いつ！」
「自分で気づいていないんですか。それでも構いませんけど。いずれにしてもあなたは従うしかない。」
「そんな‥。大きな声を出すわよ、誰か人が来るわ。」
「会社の奴らでも呼びますか。でも、それって課長が困るんじゃないですか。」
加納はわなわなと震える美沙の傍に立ち、もう一度写真を見せつける。
恫喝している言葉とは裏腹に、美沙を見下ろす視線が不思議と優しいのがよけいに不気味だった。

「ふふふっ‥。美沙課長が本当はして欲しい、と思っていることをするためにこうしているんです。」
「だったらお願い、こんな事はもうやめて。」
加納の言葉に美沙がそう返すと、加納は左右に首を振った。
「もうやめて？　本当にそれが望みだって言うんですか。それなら、その格好は一体何ですか。」
「えっ」
加納の指さしたのは、衿ぐりが深いブラウスから大胆にはみ出てしまっている胸だった。
今日は思いもかけず研修会場が暑かったので上着は一日中着ていなかった。
流石に研修中はこんな風にはなっていなかったと思うが、
和也との情事の後、彼らの訪問に慌てて支度を整えたせいで、乱れてしまっていたのだろう。
下着もかなりきわどいものを着けていた。
「あっ‥、これは」
「いい眺めですよ。研修中も胸元から下着が覗いてたはずだ。おい、そうだろう。」
そう言いながらも、加納の視線が美沙の胸のあたりから外れることはない。
加納に促された勇次達も、悪魔に心を奪われたように理性を失い、
魅せられたように、溢れでそうな魅惑的な美沙の胸元に視線をむけてしまっている。
加納の言葉の、まさにその通りだったのだ。
美沙本人が気づいていたのか、いないのか、
研修中も、屈む度にチラチラと無防備な胸元から下着が覗いていたのを彼らは盗み見ていたのだ。
そうとは言葉に出しては言えないものの、
彼らはすでに加納に操られている人形になってしまったかのようだった。

「見ないで。」
男達の視線を感じて、両手で胸元を覆うようにしながら美沙が言う。
「無理な注文です。課長は見られたかったんじゃないんですか。。おっぱいを見て欲しかったんでしょう」
そんな驚くような言葉を発した加納が、美沙の胸元を舐めるように見ながら言葉を続けていく。
「美沙課長は、おっぱいを羨まれているという優越からそんな格好で研修をしていたんですよ。」
「‥そんな‥うそよ‥」

「みせてもらいますよ。おっぱい。」
「‥」
「おっぱいを見られたいんじゃないか」という加納の一言が、美沙にはショックだった。
なのにそれが、不思議と甘美な誘惑となり、美沙の中で渦巻いていくのだ。
（おっぱいを‥、おっぱいを見られたいなんて、私‥）
確かにみんなから注目を集める胸に優越感を持ってはいたとは思う。
少しは自慢したい気持ちや、見せつけたい気持ちもあったかもしれない。
でも、こんなことは望んでいなかったはずなのだ。
こんな風に抵抗もできないまま、新入社員の男達にまでおっぱいを見られるなんて。
だって、軟らかすぎるいやらしい胸は、‥わたしのコンプレックスなのに‥
「お願い、やめて‥」
美沙がやっと捻りだした声は、しかし加納への何の防御力も持っていなかった。

「まずは、ブラウスのぼたんを外して‥」
少しの戸惑いの時間が過ぎた後、加納に促されて胸元を覆っていた手を離す。
そして、おずおずと美沙の指がぼたんにかかる。
「‥そうです。自分の手で胸元を広げていてください。」
自分は加納の言葉に逆らう事はできないのだ。
仕方がないのだとそう思う事で‥美沙は加納の指示に従っていく。
しかし‥、自分が加納の指示に従っているのは、本当にそれだけが理由なのだろうか。
おっぱいを見られたい‥そんな気持ちが本当はあるのではないか。
コンプレックスであるはずなのに‥
そのおっぱいを見せつけたいという気持ちはないのか。
美沙は自分が信じられない。

男達の前で美沙は自ら両手でブラウスの胸元をはだけたままでいる‥‥‥
加納の指は美沙の胸元を滑り降り、
ボタンの外れたブラウスから丸出しになっているブラジャーのフロントホックに掛かった。
「うっ」
美沙の声と、プチン、と小さな音と共にホックが外された‥次の、瞬間。

プルルルルンッ

一瞬‥空気の流れが止まるかのような静寂が降りて、
‥ごくりと男達が喉を鳴らした‥‥