(なんとかして、早く戦いを終わらせなければ…)
そんな人々のざわめきをよそに、美佐子は焦っていた。
なんとしても、あと１０分…、セカンドチェンジのうちに戦いを終わらせなければ…。
(サードチェンジで戦うなんて…あぁ…いや…)

セカンドチェンジにより戦い続ける麗人仮面。
（ああ…、もう無理よ。これ以上は…。お願い！）
なんとしても、サードチェンジだけは免れたい。
そんな美佐子の悲痛な願いが届いたのか、麗人仮面の激しい勢いに押された敵戦闘員達は退却しはじめたのだ。
気が付けば、麗人仮面のひたいの輝きが、また点滅しはじめていた。
それはセカンドチェンジでの戦闘可能な時間が残り３０秒となった事を告げる合図であった。
（あっ…、だめよ…。待って！）
急ぎ、人気のない崩壊したビルの片隅へと高速移動した美佐子は、そこでセカンドチェンジの解除をむかえた…。

その日の戦いは麗人仮面の活躍によって敵の組織を撃退することができた…


(…今日の戦い…あんな…、ああぁ……、恥ずか…しい。)
(もう…恥ずかしくて、博士となんて顔を合わせられない…わ…)
激戦を終え安堵する人々…しかし、美佐子の心は晴れなかった…。

麗人仮面は不完全変身ヒロインである。
これからも…、戦闘を戦い抜いていくには麗人仮面への変身…
それも今日のように長引く戦いではセカンドチェンジ、そしてサードチェンジと戦いぬくしかないのである。
美佐子には人知れずその事に怯える、理由があるのだ…
それは誰にも言えぬもの…
美佐子は本当はＦカップの胸の、容姿端麗な麗人などではない。
最大の悩みは、…貧乳なのである。
Ｆカップの見事な巨乳…それが本当は惨めな貧乳なのだという事だけは誰にも知られたくなかった。
普段はその貧乳を巨大なパットを使ってごまかしているのだ‥。
それは美佐子にとっては、ひた隠しにしていた、誰にも知られてはならない秘め事なのである。
（ああ…でも…、とうとう博士には…知られてしまったのね。）
（もう…恥ずかしくて、これからどんな顔して博士に合えばいいの……）

変身時、戦闘用スーツのバスト部分の大きな膨らみには強力なエナジーが蓄えられている。
セカンドチェンジでは、そのエナジーの放出を抑えて戦闘を継続するために本来の姿へと近づいてしまう。
もちろん、美佐子が本当に巨乳ならば、セカンドチェンジでも麗人仮面は巨乳のままなのだが…
今日の戦いで、博士には美佐子の胸は偽物で本当はかなり小さな胸である…と知られてしまった…だろう。


世の中では、麗人仮面のセカンドチェンジの話題で持ち切りである。
マスコミは連日にわたって、麗人仮面の事を報じつづけている。
「麗人仮面　変身」
セカンドチェンジの記事はそう報じられ、当然のようにトップニュースとなった。
ファーストチェンジ、セカンドチェンジと。
専門家によって、その様子は詳細に解説され、人々の間に広まっていく。
麗人仮面の…その胸の大きさから、その正体が巨乳のひろではない事は明らかだった。
やはり、あの麗人ヒロイン桂子なのではないか…と、マスコミは騒ぎ立てる。

（麗人仮面の胸が小さい事を…知られてしまったのは…あぁ…恥ずかしい…ことだけど…）
それはもう仕方のない事…、裸を曝してしまった訳ではないのだし…と思うしかないのだ。
すでに美佐子は麗人仮面として、戦うことから逃れられぬのだから…。
もう引き返す事はできない…わ…、とそれでも正義感に駆られる美佐子は思い直すのだ。